芸能界デビューへの道芸能人になると直面することA


失敗は成功のもと

稽古場で演出家から、撮影現場で監督から、俳優は「ダメだし」をされます。
この場合の「ダメ」というのは、「演技についての要求」ということです。
ダメの出し方は人によって様々ですが、時に手厳しい物言いをする場合もあります。
このときに、どんなに荒々しくなじられたとしても、
俳優はネガティブになってはいけません。

大きな声で怒鳴られたり、例え丁寧な物言いでも辛辣なことを言われたときには、
怒られ慣れていない若い人たちにありがちなのですが、
あたかも人間性全てを否定されたような気になることさえあります。
しかし、演出家や監督は、俳優の人間性を否定することを目的としているのではなく、
あくまで作品をつくる上で必要な作業を、
俳優にやって欲しい演技を要求しているのです。

演技とは自分の身体・感情・想像力全てを注いで行うものですから、
それに対する批判的な意見は、ときに自らの存在価値を
全て否定されるような印象をもつかも知れません。

また、経験の浅い演出家や監督の中には、あえて辛辣な物言いをして
俳優に対する権威を示そうとする人もいないとは言い切れません。
でも、その現場を選んだのは、その作品に出演することを最終的に決めたのは、
誰でしょう? 他でもない、俳優自身です。

どうしても辛いときには、心身を壊してしまう前に現場を離れることも
やむを得ませんが、しかしそうすることは結果として、
自分自身の選択を自分自身で否定することにつながってしまいます。

一度舞台を降りたことのある俳優には「降りグセ」がついてしまうのは、
このためです。登校拒否と同じようなもので、一度休みだしたら止まらない。
最終的に退学になる。俳優業で言えば、「引退する」ということです。

ましてや、ダメだしされるのが苦痛で役を降板したとあっては、
これから先の長く厳しい俳優人生を歩んでいく心構えが
全くできていないということと同義です。

「降りようかな」と弱音を吐く前に、どうにかしてこの演出家を、
監督を納得させてやろう。誰にも負けないくらいの名演技をしてやろう、
というふうに、どうにかして気持ちを前に向ける作業を、
気持ちを強く持つ作業をしてみてください。
その上で、自分の抱えている課題は何か、
演出家・監督は何を自分に要求しているのかを、改めて考えてみることです。

稽古やリハーサルは、本番ではありません。
たくさん失敗して、たくさんダメだしをもらって、たくさん試行錯誤して、
たくさんの思考と経験を積み重ねることができる、言わば実験場です。
失敗は決して怖がらず、むしろ失敗も成功の糧とするくらいの意気込みで、
果敢に壁にぶつかるようにしてみましょう。

壁はいつか崩れます。でもそのたびに、次の壁が見えてきます。
このくり返しを楽しむくらいの大らかさと余裕をもって、
様々なことに挑戦してみてください。諦めさえしなければ、
いつか、花開くときはきます。


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